伸び伸び子育ての勘違い

「子どもを伸び伸びと育てましょう。」とは良く聞く言葉です。その「伸び伸び」に落とし穴があ ります。

子どものしたいようにさせるのが、「伸び伸び」であると勘違いされて、子育てをされている場合です。

確かに遊びの場面においては、子どものしたいようにさせることが非常に大切です。汚れるから、汚すから、大人の価値観と違うから、といって子どもの手を止める必要はないし、逆に止めることによって興味の芽が伸びなくなり、遊びが発展しません。

しかし、生活面においてはどうでしょう。ご飯を食べる前に「いただきます。」と言ってから食べることは、ある種常識的なことと言えるでしょう。けれど、「うちの子は、言いたくないというので言わせていません。」というのは、極端な例ですが、それに近いようなお話しはよく耳にします。

「したくないと言うので、させない」「かわいそうだから、言うことを聞いてしまう」・・・・・。 果たして、そのような状態で育ってきた子はどのようになっていくでしょう。最も想像がつくのは、 我慢ができない子です。

我慢ができない子は、精神的に弱いと言えます。困難に向かっていく気力もなく、うまくかわすことを覚えていってしまいます。

小さいうちから、その年齢に応じた小さな課題が与えられることは、とても大切なことです。それは、その時期の生活習慣を身につけていく過程にあります。自分の子どもが生まれ、子育てをしていく時の大きな目標として「自分のことは、自分でできるようになる」ということがあります。

いわゆる自己管理の能力です。その目標達成時期を小学校入学時だとすると、そこから逆算して今の時期にどのようなことができていた方が良いかということが考えられます。

例えば、幼稚園時期に何でもお母さん任せにしている子どもが小学校に入ったからと言って、急に身の回りの管理が自分でできるようになるとは、とても思えません。

おもちゃのお片づけは、お母さん。幼稚園かばんのご用意もお母さん。起きる時間も寝る時間もお母さん任せ。そのような状態の子どもが入学後、自分で朝起きる事から始まり、朝の身支度、時間割のチェック、筆箱の鉛筆削り、給食当番着の管理、 教科書の片づけ等々、数え上げるときりがないくらいの項目を、自分でしなければならないことだと捉え、実践していくことができるでしょうか。

それでも「私が見ていないと何もできない子だから、ついつい指示を出したり、手伝ってしまう。」と言うお母さんもいらっしゃいますが、その子の自立という面で捉えていくとき「年齢が上がればできるようになる」とお考えなのでしょうか。

我慢ができない精神的に弱い子どもは、自分が億劫なことからは逃げてしまいます。

まず、幼稚園時期に自分のするべき事であるという認識が無い場合、小学校に上がったから「自分が出したものは、自分で片づけなさい!」と言っても、片づけはお母さんがするものとしか思っていませんし、いざ片づけようと思っても、経験がないのでどのように片づければよいのか、さっぱりわからないということもあります。

それなのにいきなり指示され、半分怒られながら片づけないといけないとなると、その子にとってお片づけはとてもイヤな事の1つになります。

お部屋を片づけられない女性が最近続出しているそうで度々テレビなどで取り上げられています。

もっともっと小さい時期−すべてのことが遊びであると捉えられる時期に一緒に片づける楽しさ、分類して片づける方法、片づけ終わった後の気持ちよさ、そして、次の行動(食事など)に移るときには、片づけてから行うといったけじめを知らせていくことができます。

特に自立していく段階で、世の中には様々なけじめがあることを知っていくことは非常に大切なことです。そのけじめを知り、その場その場の状況や場所に応じた行動を知らせていくことがしつけです。

しかし、こどもが「したくない」と言い、お母さんの方が根負けしてしまったり、放っておけずに手を出してしまったとしたら、こどもはけじめを知ることができませんし、自分の欲求を抑えて、 今しなければならないことに対して気持ちを向けていくといった気持ちをコントロ−ルすることもできないまま成長していきます。

色々な制約の中で気持ちをコントロ−ルし、次の事項に気持ちを向けていけない子は、社会性が乏しい子です。そのような子は、自分の気持ちや欲求が第1にあるので、自分を取り巻く他者や事物や状況に考えを馳せることができません。

自分の興味のあることであれば、熱心に追求することができるのに、周りで起こっている事は、自分に起こっていることだとわからないのです。

例えば一斉に行動をとらなければならないような場面でも、自分に興味のないことであれば、まず人の話を聞いていませんし、それによって同じ行動がとれなくても気になりません。周りの助言によって初めて自分が違う行動をとっていることに気づきますが、それからどのように自分が行動すればよいのかわからず不安になったりします。

このように自立に向けて生活習慣を身につけていく中で機嫌の良い日も悪い日も続けていくことが、忍耐力を養い、より早く気持ちをコントロ−ルし次に気持ちを向けていくことを体得していくことができます。

色々な場面で、気持ちをコントロ−ルし、自分の興味が無いことにも気持ちを向けていける子は、柔軟な心を持った子どもです。柔らかい心を持つということは、柔らかい思考を持つということに繋がります。

それは生活面だけでなく、知的好奇心や探求心の、ひいては学習面に繋がります。学習において、何事も興味深く捉え、取り組める子は、柔軟な心と思考を持っています。

 
   h13/9/21ぴーすらんどたいむず掲載